「es」という映画がある。
実際に行われた監獄実験をもとに作られた映画で、発表当時とても話題になった。見た人も多いと思う。
新聞広告によって募集された男たちが、ドイツの大学地下に設置された擬似刑務所で、囚人と看守の役を2週間演じ続ける実験が行われる。
このesのモデルになった実験が「スタンフォード監獄実験」というんだけど、さらにその元ネタがスタンレー・ミルグラムの服従実験。
「服従の心理」はマジで衝撃的な内容だった。引用したい内容はたくさんあるんだけど、あえて訳者あとがきの一部のみ引用する。
本書には、多くの被験者のナマの声が掲載されている。自分の行為に気がついて深い後悔にとらわれる人もいれば、まったく無意味な弁明をしゃべり倒し、記憶を改変してまで自分のやった行為に直面しようとしない人もいる(ミルグラムはかなり露骨にそうした人への侮蔑をあらわにしている)。が、おそらく似たような状況で、自分が一度や二度は使ったことのある弁明だったりすることも多いはずだ。読者の多くは、この弱く従順な人びとの弁明に、自分自身の姿を見いだして赤面することだろう。そして次に権威の非道な命令に直面したとき、以前とはちょっとちがった対応ができるのではないか。 さらに一部の被験者が、電撃を加えたことの後ろめたさを隠蔽すべく、被害者を見下してかれらの無能さに責任転嫁することで自分を正当化しようとしたという記述には、多くの読者がはっとさせられるのではないか。多くの差別やいじめの源泉がここにはある。差別やいじめは、差別されたりいじめられたりする理由があるはずだ、と考える人も多い。だが時には逆に、理由もなく差別したことを正当化するために後付で理由が捏造されることもある。そうした心の働きもこの実験は見事に記録している。(P.342)
的確過ぎて赤面した。
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