交渉相手の警戒を解き真意を引き出すテクニック、決裂必至の国際会議で合意を作る根回し術、当事者全員に利がある調停の肝は、「戦わない」交渉哲学から生まれた―。コソボ軍事紛争調停からCOP10名古屋議定書採択まで、不可能を可能にした交渉・調停の達人が、知られざる国際交渉の舞台裏を生々しく伝える。日本の底力と可能性を浮き彫りにする、驚きと感動の書。
読み物としてなかなか面白かった。国際紛争調停官だった著者が「こういう国際的な交渉現場で、こんな風にまとめ上げたよ」ってエピソードが語られている。「こういう仕事してる人がいるんだー」って勉強になったわ。でも、生々しさはそんなになかった。あんまり詳しく話すことができない事情は、まあ、そりゃーあるんだろうと思う。
P.14 さまざまな合意のなかでも、結局長続きするのは、当事者同士が納得している合意だけです。いくら力で押さえつけても、その下に不満がくすぶっていれば、争いはいつか必ず再燃します。どんな交渉でも、表面の勝ちばかりを追っていると、その場はよくてもいつか必ずしっぺ返しがきます。私自信も、「負けた」と感じた相手の思いが、次第に「損をさせられた」「だまされた」「恥をかかせられた」という不満に変わって蓄積してゆき、結果的に思わぬところで想定外の妨害をされたこともありました。
これはこの本以外でも、よく「重要なことだよ」って言われますね。そういや、うちの社長も言ってたな。やっぱwinwinじゃないとね。押し切ったりゴネたり陥れたり騙したり、やっちゃいけませんね。
P.29 「お前の言っていることは一〇〇パーセント正しい。それは認める。ただ、”場”を考えろ。とにかく頭を冷やせ」
若い頃って、こんなだよな。
「わかった。じゃあ俺が先方に謝っておく。俺はお前のボスだ。お前の代わりに俺が謝って問題が解決できるのだったら、お前はすぐに戻ってこい。お前自身にできることがあるなら、それをやってから帰ってこい。その判断は任せる。ただ、焦って、何とかしなきゃと一人でどんどん穴を掘っていくのだけはやめてくれ。そのときは、問題解決のために誰かを送るし、俺がそちらにいってもいい」
まだ半人前だった著者にメンターがかけた言葉。なんちゅうカッチョイーボスや・・・。
P.79 オレンジが一つあって、それを二人の姉妹で分けたい。どちらも三分の二を欲しがっている。このとき、どうやって解決案を出せばいいか?
これ、回答を含めしょっちゅう見かける寓話ですね。好きですこの寓話。
P.182 自分の手柄が反映されている提案には、なかなか反対できないのが人間の心理というものなのです。
相手にコミットしてもらうって話。「影響力の武器」の「コミットメントと一貫性」の話と同じですね。
私は、交渉の場で嘘をつくことは決してしません。嘘や間違った情報を意図的に交渉に織り交ぜてしまうと、必ず破綻するからです。偽の情報を交ぜた経緯を守るためにさらなる嘘の上塗りをしていく羽目になり、いつの間にか目指すべき方向性から外れてしまいます。
「一つの嘘をとおすために別の嘘を二十発明せねばならない。」なんて話もありますしね。
結構ライトな内容なので、サクサク読める本でした。
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